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て、積極的な制裁や厳しい規制を設け、環境保全や環境資源の管理を行うといった主旨のものではなく、現在も日本の海洋・沿岸環境は蝕まれ続けている近年の環境問題の世界的な高まりの中、1992年の「アジェンダ21」での「持続可能な開発」を期に、日本でもミチゲーション的考えを考慮した制度の検討が関係省庁で行われるようになった。
2. 研究目的
近年、海洋汚染を含む地球規模の環境問題が人類共通の問題とされ、世界的に開発行為の行き過ぎと沿岸環境の悪化が認識されている。このことは日本周辺海域でも例外ではなく、開発行為と環境保全とが調和した整備が必要とされるようになってきている。しかし、日本の沿岸域の管理の状況はアメリカやフランスとは大きく異なり、これらの国のミチゲーションの制度をそのまま導入することは出来ない。本研究では、関係省庁の現段階でのミチゲーション的考え方を、ヒアリング調査により大まかに把握し、同時に独自のアンケート調査により、現時点での日本に適したミチゲーション制度に対する取り組みや環境創造技術、ミチゲーションに対する認識を把握し、日本型ミチゲーションの導入に付する現時点での行政の動向を把握し、今後の沿岸域整備事業の課題を抽出することを目的としている。
3. 研究の方法
3-1. 岸域の環境問題の把握
沿岸整備事業と環境問題の現状を関連づけて把握するため、文献調査・ヒアリング調査により、沿岸域の現状の環境問題の概要を整理する。
3-2. 関係省庁のミチゲーション的考え方の把握
沿岸域を管轄する運輸省、建設省、水産庁、農林水産省と国土庁等の関係団体を対象に、日本に適したミチゲーション制度に対する取り組みの概要をヒアリング調査により把握する。
?. 関係省庁の選定
?. ヒアリング調査
?. 行政の取り組みの把握
3-3. ミチゲーションに対する認識の把握
ミチゲーション導入に対する具体的な認識や、海岸環境・生物に配慮した事業の傾向を把握するため、沿岸域整備事業に実際に携わる関係省庁を対象にアンケート調査を行う。
?. アンケート調査対象の選定
?. 調査項目の設定
?. アンケート調査の実施
?. アンケートの集計
3-4. 環境創造技術の把握
アンケート調査及び文献調査より、既存の海域環境・生物に配慮した事業を整理し、環境創造技術を目的と工法別に分類し把握する。
3-5. 今後の沿岸域整備事業の課題の抽出以上のことを総合的に考察して、ミチゲーションを導入する際の沿岸域整備事業の課題を抽出する。
4. 調査結果
4-1. 沿岸域の現状の環境問題
沿岸域における現状の現境問題の概要
?自然海岸の減少
?藻場の減少
?干潟の減少
?自然海岸の減少(fig-1.)…3)日本の海岸線の総延長、約32,800?あり、そのうち本土域は、約6割の、約19,100?を占めている。本土域に限ってみると、自然海岸は、45%と半分以下になり、人工海岸が38%を占めている。また、臨海部の開発か活発な東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の海岸状況は、どの海域も人工海岸が60%以上を示している。
?藻場の減少(table-1.)…4)日本全国に201,154haの藻場が確認され、その内の6,403haの藻場か1978年以降に消失している。消失理由として、埋め立てによる消失が1863haで消失藻場全体の29.1%で、直接的ではないが、消波ブロックの設置により藻場か砂に埋まってしまった例も報告されている。
?干潟の減少(table-2.)…4)日本沿岸域の干潟の存在する海域に接する39県で調査をした結果、干潟が存在したのは31県であり、51,462haの干潟か存在し、4,076haの干潟が1978年以降に消失したことがわかった。また、消失干潟のうち1,890haが埋立による消失であった。

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Fig-1.Lost of Natural Coastline

 

 

 

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